果て
お疲れ様です。会長です。
すっかり寒くなってもう秋の面影もないですね。
季節の変わり目はなんだか懐かしい気持ちになります。 冬だと、指先を凍らせながらした新聞貼りや遅くまでライトを照らしながらした作業や準備、凍えながらした通し稽古、白い吐息、黒いサークルパーカー、時には耳や鼻先を赤くしながら稽古をして、…ぐちゃぐちゃと色々なことを思い出してしまいます。
今回の劇、同期の仲間が既に紹介してくれている通り、一人の男の復讐劇になります。
暗さや陰りのある話だと思います。 だけど、だからこそ、学劇に身を投じている人には見ていただきたいなって思います。
一人の男は友と理想を抱きます。 国を良くすると。 その想いは踏みにじられていく。 友を殺され、自らも陥れられ、無実の罪で投獄され、幾年も苦しめられ、狂えることも出来ず、ただただ瞳に復讐を宿す。 謎の囚人との邂逅をきっかけに、男は解放され、己の復讐を果たしていく。
男には始めの想いがありました。 きっとその始めの想いは美しく、眩いものだったはずです。 だが、それがぐちゃぐちゃにされていく。自分一人ではどうしようもなく、欲望と悪意、他者の心によって蝕まれていく。
男は復讐の鬼となります。 男は復讐の鬼となります。
きっとならずにはいられなかったのでしょうね。
懇々とあらすじを語ってしまいましたが、この劇、復讐劇であると同時に国の話でもあるんですよね。
夢を抱いて何かを成そうとして、そこには現実あって、また別の人がいて、折り合いのつけ方が分からなくて、想いのやりどころが分からなくて、どうすればいいのか分からなくて。
思い込みだったらごめんなさい。 だけど、学劇に携わる人、携わったことのある人は何となく、同じような想いを抱いたことがあると思います。
ただ、良いものが作りたくて、でもそこには現実があって、苦しさがあって、折り合いのつけ方が分からなくて、想いのやりどころが分からなくて、どうすればいいのか分からなくて。
人と組織の話なんていうのはこの先、生きていれば必ず付いて回る問題だと思います。 きっと、立派な大人たちなら綺麗に折り合いを付けて、整理して、解決していくのだと思います。
けど、学劇に携わっているのは僕たちまだまだ未熟な青年たちです。
本来であれば、作り上げる作品に作り手の意識や意図、作意が見え透き過ぎるのは褒められたことではない気がします。
ですが、僕自身は今回ここに意味があってもいいのかなって思います。
学劇の僕らが行う「蛮幽鬼」だからこそ、この劇の意味が深まるのかなって思います。
卒業していく僕らの公演だからこそ、そこに残してしまうものがあってもいいのかなって。
ここまで、また色々と書いてしまいました。
僕自身、苦しかっただけの、辛かっただけの四年間という訳ではありません。 もちろん、楽しかったです。
ですが、終わり良ければ全て良し、で前を向いてこれまでのことを無かったことには出来ません。
後悔と未練も全部嘘ではありません。だから、今でも分かりきれていないものがたくさんあります。
今回、演じさせていただくサジと名乗る男は不思議な男でした。
何故その表情を浮かべ、言葉を吐き、行動を起こすのか理解出来ませんでした。
でも今ならこの男が何を思って、何を体験して、そこに至ったのかが分かる気がします。
だからこそ、この男と共にもう少しだけ見えていない何かを探してみようと思います。
今回の卒業公演、たくさんのお客様に楽しんでいただけると幸いです。 当日、皆さまのご来場を心待ちにしております。